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ベースの調整依頼

更新日:2024年2月29日

今回はお客様からベースの調整依頼。


ご依頼主さまのとても思い入れのある楽器をお預かりさせていただきました。

ご依頼内容としては

「以前5弦ベースにバッファを積んでいただいたいて、それがとっても良かったのでこちらにも搭載&全体的に色々と好きにやっちゃってください!」と。

いやー、実に難易度の高いご依頼です。

好きにやっちゃってくださいですからね。私なりのフィルターを通して面白いものをご提供できるように努めます。



まずは楽器をお預かりして改めて楽器の特性や弾き心地、サウンドバランスなどをじっくりと私の中に落とし込んでいきます。

ここが非常に重要で、今回のご依頼は楽器の機能として問題は無い。

あくまで「好きにやっちゃってください」だからです。

ご依頼主さまとは何度もお会いしているため、サウンドの嗜好やどんな弾き方をされているのか、アンプやFX類の使い方など頭に入っています。


そこも加味しつつ、私の判断としては

・ワイドレンジとビンテージの中間辺りのサウンドになっているが、高倍音が先に発音してしまいミドル〜ローにかけてのおいしいポイントが感じにくい

・テンション感がきつく、サスティンが短く感じる

・出音と弾き心地が乖離している

と判断させていただきました。


ご依頼主さまとのやり取りを経て、どんどんと進めていきます。

不可逆的な加工は無しです。


・全体的にテンションを緩める

ブリッジ下にアルミプレート、ストリングリテーナーの下にワッシャを仕込みテンション感を緩めます。

レスポンス的にはアタックが目立ち気味だったのをサスティンを伸ばす方向に。




・バッファを積極的に音色変化に使用し、プッシュプルポットを使用しバッファのオンオフ。


当初は、ピックアップに合わせて少々レンジを狭めたバッファを搭載させていただきましたが、「これだとあんまり変化がわからない」とのことで(笑)

そりゃそうです、「バッファ」ですから。


音色変化を狙いEQ的な回路まで検討しましたが、スペースも普通のジャズべのザグリと一緒ですので狭いですから余計な回路なんて入れるスペースなどありません。

そこでナチュラルなハイカットとミッドに暴れ感が出るように、パッシブピックアップでハイインピーダンス出力ということに着目し、入力インピーダンスが少々変化&パーツの特性で色んな変化が起きる「バッファもどき」を設計、内部に仕込みました。

周波数的なレンジのみ変化するものではなく、ダイナミクスにも変化が起こる「面白バッファ君」が完成。



・ピックアップの交換

出音のかなりの割合を占めるであろうピックアップ。

しかも「思い入れのあるブランドのピックアップ」です。

気持ちが入っているものですから、ここまで踏み込んでいいものか本当に悩みました。


でも、ご依頼主さまの本来求めているサウンドや弾き心地は演奏を何度も見させていただいているうちに「楽器とズレている」と思っていました。

全体的なバランスを整えたからこそ、ピックアップも交換した方がいい結果が出るであろうと。


おそるおそる、お伺いしてみます。

私「ーーーーーーー、と考えピックアップも交換した方がいい結果が出そうです。いかがでしょうか?」


ご依頼主さま 「全然いいですよ!」


はい、私の考えすぎですね。

もっとストレートにいきましょう。



結果

・弾き心地と出音が一致し、ご依頼主さまの弾き方もナチュラルに変化

・タッチ感をスポイルすることなく、バッファでの音色変化も成功


お引渡し済みで、これからご依頼主さまがどんなサウンドを出してくださるのか楽しみです。

注、普段はあんまり受け付けておりません。



ご依頼主さまから、ご感想いただきました!

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「今回ばかりは失敗かなぁ?」

ベースを受け取って最初の反応でした。


日頃お世話になっているFumi Soundさんに、愛機へのカスタムバッファ内蔵と全体的なチューンナップを依頼しました。

Fumi Soundさんの耳と技術には全幅の信頼を置いているので、こちらからの要望は適宜伝えつつも基本的にはお任せすることに。最終的にはピックアップの交換まで行い、これまでとは全く別の楽器に生まれ変わりました。


満を持して受け取り、自宅で音出し…からの冒頭の反応に戻ります。

元の状態がパッシブ楽器にしてはかなりワイドレンジな音だったので、正直その落差に耳がついていきませんでした。笑


しょぼい音だなーと思いながらも弾いてると、時々おや?と面白い音が出る。もう一度その音を出そうと工夫するうちにだんだんタッチも変わってきて、楽器の鳴らし方にも変化が現れます。

「確かにローとミドルが充実してるけど、ハイが無さすぎるような…?

いやでもフロントいい音するな、昔のレコードで聴けるプレベみたいな感触…

あ、リアもいい感じだ。ハイミッドの美味しいところがでてる。

ミックスは...お、なんだか面白い暴れ方するぞ…」

あれこれ試行錯誤しながらベースラインを弾き続け、気づけばあっという間に2h経っていました。時間を忘れてベースを弾き続けるなんていつぶりでしょう。

悔しいけど、これはいいものです。笑


これまではなるべくフラットでワイドレンジな楽器を使って、タッチ調整で必要な音を出すというスタンスで演奏していました。

今振り返ってみると、そのようなアプローチだと知らず知らずにタッチが弱くなってたり、聴こえてほしいミドルの美味しい部分を取りこぼしていたかもしれないなと感じています。


Fumi Soundさんにはこちらの奏法や音の好みまで加味したサウンドをご提案いただき、改めてありがとうございます!

単なるナローレンジチューンではなく、サウンドの美味しい部分を残しつつレスポンス感を損なわないような調整ができるのは流石の一言です。

これからスタジオ入るのが楽しみです!





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